エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
珠希が目を覚ましたとき、ベッドに碧の姿はなかった。
もぞもぞと毛布の間から顔を出して時計を見ると、ちょうど八時を過ぎたばかりだった。

「碧さん?」

今日も仕事なのだろうかと考えながらベッドから床に脚を下ろした。

「きゃーっ」

脚に力が入らずよろけてしまい、珠希はカーペットの上に勢いよく倒れてしまった。

「うそ……なんで」

ほぼ大の字に倒れたまま、珠希は目を白黒させる。

「碧さんのせいだ」

昨夜碧に激しく抱かれたせいで脚も腰もぼろぼろだ。
ほかにも体中に筋肉痛に似た痛みが広がっていて、わずかに身体を動かすのも億劫だ。
それにしてもと、珠希は腕に残る赤い華を眺めた。
昨夜の碧の抱き方は今までになく強引で、別人のように激しかった。
珠希の身体を乱暴に押しつけるだけでなく、逃がさないとばかりに何度も貫き、珠希の華奢な身体を抱き潰した。

「なにかあったのかな……」

赤い華を指先でなぞりながら、珠希は全身に残る快楽の余韻を感じていた。 

「今、すごい音がしなかったか?」 

珠希が倒れた音を聞きつけて、碧が部屋に飛び込んできた。

「……え、珠希、そんなに寝相が悪かった?」

ベッドの下で大の字で倒れている珠希に、碧は目を丸くしている。

「誰のせいですか。昨夜碧さんが加減してくれなかったから、立てないんです」

顔を真っ赤にし、珠希はそう言ってぷいっと顔を背けた。 

「加減できなかったのは誰のせいだろうな」

くっくと笑いながら、碧は珠希の傍らにしゃがみ込む。

「誰かさんがかわいい寝顔で俺を誘うから、我慢できなかったんだよ」
「さ、誘ってなんかいません。ソファでお茶を飲んでたらいつの間にか眠ってたみたいで。起きたら碧さんが私の上に乗ってて……あ、あ、いいんです、もうそのことは」

まだ寝ぼけているのか、珠希は思わず口にした言葉に慌て、ごろりと身体を反転させて碧に背を向けた。
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