エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
「俺が上に乗って、どうした?」

碧のからかう声に、珠希は膝を抱えて首をぶんぶんと横に振る。

「いいんです、もう、そのことは忘れて――んっ」

碧の指が珠希の背中をつーっと撫でている。
突然の刺激に珠希は身を震わせ鼻にかかる声をあげた。
夜の艶事を思い出すその声に、珠希は恥ずかしすぎて絶望的な気持ちになる。

「思い出した? 昨夜珠希がどんな風に俺に抱かれたか」
「い、意地悪言わないでください。もう、忘れました。全然覚えてません」
「へえ。かなり気持ち良さそうにしてたけどな。俺がどれだけ激しくしてもちゃんとついてきて偉かったんだけど。そっか、忘れたならまた教え込まないといけないかな」

くすくす笑う珠希の声を背中で聞きながら、珠希は羞恥に身もだえる。
碧に言われたことなら身体のあちこちが覚えている。
自分がどれだけ乱れ、声をあげていたか。
そして自ら腰を揺らしていた記憶もちゃんと残っている。

「もう、やだ」

珠希は泣きそうな気持ちになりながら、さらに膝を抱き寄せ身体を小さくした。

「まあ、俺にも責任があるから、仕方ないな」

碧の面白がっている声が聞こえたと思うと。

「えっ?」

珠希は碧に抱き上げられていた。

「ちょ、ちょっと、あの」
「暴れると落ちるぞ」

碧は珠希に軽く口づけると、すたすたと歩き出す。

「珠希が好きなフレンチトースト、作ったから」
「本当ですか? ありがとうございます。碧さんが作るフレンチトースト大好きなんです」

もともと料理に慣れている碧は、時間を見つけてキッチンに立つのだが、なかでもフレンチトーストは絶品で、流行りのカフェで食べるよりおいしいのだ。
珠希は頬を緩め碧の首にしがみついた。

「お腹が空いてるのでいくつでも食べられそうです」
「そりゃあ、あれだけ動いてあれだけ声を出したら、お腹も空くし、喉も渇くだろ」
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