エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
「お、大きく出たね。でも、それも宗崎に託そうかな」
ははっと気楽に笑っているが、笹原の目は本気だ。
「それって、今以上に碧さんとの時間がなくなりそうで、複雑です」
珠希は拗ねた口ぶりで言い返す。
「ごめんごめん。今日こそ早く帰ってもらうから。……それよりも、大丈夫だっただろ?」
「……はい」
ここに来て祖父のことを思い出しても、泣きたくなったり、悲しみで胸が潰れたりするようなことはなかった。
それどころか当時の楽しく温かな時間がよみがえり、胸につかえていたものがすっと消えたような気がしている。
「なんだか、不思議……」
絵を眺めている珠希の落ち着いた横顔を見ながら、笹原はホッとしたように笑っている。
「不思議でもなんでもないよ。おじいさんは、珠希さんや拓真くんと一緒にここでよく笑っていたからね。今までそのことを忘れていただけ。それだけだよ」
「そうかもしれません」
笹原の言葉を、珠希はしみじみとかみしめる。
「あ、笹原先生こんにちは」
背後のエレベーターが開く音がしたと同時に、女性の声が聞こえた。
患者か、患者の家族だろう。
「ああ、如月さん、こんにちは」
笹原が女性の声に応えている。
珠希は如月という名前を聞いて、聞き覚えがあるような気がして小さく反応した。
声がする方を見てみると、見覚えのある横顔が、笹原に会釈し歩き去るところだった。
「……えっ」
一瞬目にした横顔に、珠希は声にならない声をあげ、瞬きを止めた。
彼女は紗雪だ。
珠希の脳裏に、彼女の肩を抱く碧の姿がよみがえる。
紗雪は珠希に気づかず、ナースステーションに一番近い病室に、足早に入っていった。
「嘘……紗雪さん」
まさか病棟にまで碧を追いかけてきたのだろうかと、珠希は一瞬身構えたが、笹原と言葉を交わし、躊躇なく病室に入っていった。
きっと患者の家族か知り合いなのだろう。
ははっと気楽に笑っているが、笹原の目は本気だ。
「それって、今以上に碧さんとの時間がなくなりそうで、複雑です」
珠希は拗ねた口ぶりで言い返す。
「ごめんごめん。今日こそ早く帰ってもらうから。……それよりも、大丈夫だっただろ?」
「……はい」
ここに来て祖父のことを思い出しても、泣きたくなったり、悲しみで胸が潰れたりするようなことはなかった。
それどころか当時の楽しく温かな時間がよみがえり、胸につかえていたものがすっと消えたような気がしている。
「なんだか、不思議……」
絵を眺めている珠希の落ち着いた横顔を見ながら、笹原はホッとしたように笑っている。
「不思議でもなんでもないよ。おじいさんは、珠希さんや拓真くんと一緒にここでよく笑っていたからね。今までそのことを忘れていただけ。それだけだよ」
「そうかもしれません」
笹原の言葉を、珠希はしみじみとかみしめる。
「あ、笹原先生こんにちは」
背後のエレベーターが開く音がしたと同時に、女性の声が聞こえた。
患者か、患者の家族だろう。
「ああ、如月さん、こんにちは」
笹原が女性の声に応えている。
珠希は如月という名前を聞いて、聞き覚えがあるような気がして小さく反応した。
声がする方を見てみると、見覚えのある横顔が、笹原に会釈し歩き去るところだった。
「……えっ」
一瞬目にした横顔に、珠希は声にならない声をあげ、瞬きを止めた。
彼女は紗雪だ。
珠希の脳裏に、彼女の肩を抱く碧の姿がよみがえる。
紗雪は珠希に気づかず、ナースステーションに一番近い病室に、足早に入っていった。
「嘘……紗雪さん」
まさか病棟にまで碧を追いかけてきたのだろうかと、珠希は一瞬身構えたが、笹原と言葉を交わし、躊躇なく病室に入っていった。
きっと患者の家族か知り合いなのだろう。