エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
白石病院での打ち合わせから一週間が経ち、珠希はレッスンと並行してクリスマスイベントの準備に時間を割いていた。
演奏曲の練習や衣装の用意など、しなければならないことは山積みで毎日があっという間に過ぎていく。
今日も二十時までのレッスンを終えた後、疲れた身体で帰宅した。
珠希の自宅は高級住宅が建ち並ぶ閑静な住宅地にある。
周辺には緑が多く、駅にも近い。
祖父が建てた日本家屋は珠希が大学生のときに改築され、6LDKと部屋数が多く通勤に便利なこともあり、珠希は今もここで両親と暮らしている。
大学卒業を機に職場の近くでひとり暮らしを始めるつもりでいたが、祖父を亡くした寂しさを隠せずにいる両親を置いて家を出る気にはなれなかった。
というよりも、珠希もまだ悲しみの中にいて、家族から離れられなかったというのが正しいかもしれない。
二十五歳の今も自立できていない状況に情けない思いはあるが、家族の優しさに甘えさせてもらっている。
「ただいま」
珠希がリビングに顔を出すと、父と母がローテーブルを挟んで座り手元にある書類のようなものを真剣に眺めていた。
「どうしたの? なにかあった?」
珠希の声に、両親は揃って珠希に視線を向けた。
「あ、おかえりなさい。今日も遅くまでお疲れ様」
珠希の母は、テーブルの上の書類をそれとなく父親の手元に寄せながら立ち上がる。
「おなかが空いたでしょう。今日は珠希が好きな豚の角煮を作ったから今温めるわね。あ、その前に手を洗ってきてね」
「はーい」
豚の角煮と聞き、珠希は一瞬目を輝かせたが、ふとおかしいと思い足を止めた。
豚の角煮は珠希だけでなく拓真も大好物の一品で、大抵は拓真夫婦が来る週末にまとめてどんと作って拓真の妻の茉耶に持たせるのだ。
「もしかして、今日お兄ちゃんが来てたの?」
演奏曲の練習や衣装の用意など、しなければならないことは山積みで毎日があっという間に過ぎていく。
今日も二十時までのレッスンを終えた後、疲れた身体で帰宅した。
珠希の自宅は高級住宅が建ち並ぶ閑静な住宅地にある。
周辺には緑が多く、駅にも近い。
祖父が建てた日本家屋は珠希が大学生のときに改築され、6LDKと部屋数が多く通勤に便利なこともあり、珠希は今もここで両親と暮らしている。
大学卒業を機に職場の近くでひとり暮らしを始めるつもりでいたが、祖父を亡くした寂しさを隠せずにいる両親を置いて家を出る気にはなれなかった。
というよりも、珠希もまだ悲しみの中にいて、家族から離れられなかったというのが正しいかもしれない。
二十五歳の今も自立できていない状況に情けない思いはあるが、家族の優しさに甘えさせてもらっている。
「ただいま」
珠希がリビングに顔を出すと、父と母がローテーブルを挟んで座り手元にある書類のようなものを真剣に眺めていた。
「どうしたの? なにかあった?」
珠希の声に、両親は揃って珠希に視線を向けた。
「あ、おかえりなさい。今日も遅くまでお疲れ様」
珠希の母は、テーブルの上の書類をそれとなく父親の手元に寄せながら立ち上がる。
「おなかが空いたでしょう。今日は珠希が好きな豚の角煮を作ったから今温めるわね。あ、その前に手を洗ってきてね」
「はーい」
豚の角煮と聞き、珠希は一瞬目を輝かせたが、ふとおかしいと思い足を止めた。
豚の角煮は珠希だけでなく拓真も大好物の一品で、大抵は拓真夫婦が来る週末にまとめてどんと作って拓真の妻の茉耶に持たせるのだ。
「もしかして、今日お兄ちゃんが来てたの?」