エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
「遥香ちゃんのって、俺そんなこと言った? いや、あのときはさっさと帰ろうとしているから慌てていて」
宗崎は言い淀み、掴んでいた珠希の手を引き寄せふたりの距離を詰める。
「そ、宗崎さん……?」
突然目の前に端正な顔が現れ、珠希は息をのんだ。
「あ、悪い」
碧の手がゆっくり離れていく。
珠希は腕に残る体温を確認するように、反対側の手でその手を抱きしめた。
「痛くないか? 申し訳ない」
碧は珠希の様子に慌て、痕が残っていないかと気にかけている。
「あ、平気です。大丈夫」
大げさに手を振って見せる珠希に、碧はホッと表情を緩めた。
「とにかくこの店は一緒に食事がしたくて選んだってだけで、呼び出しは関係ないから」
「は、はい」
碧の言葉が、珠希には信じられない。
碧との再会を楽しみにしていたのは珠希の方だ。
見合いに家業の立て直しという裏事情があったとしても、珠希はただ碧に会いたかった。
遥香を交えて過ごした時間はわずかだったが、あの日から何度も碧を思い出しては会いたいと思っていたのだ。
まさか碧も珠希との再会を望んでいるとは微塵も想像していなかった。
おまけに店まで予約してくれていた。
珠希は胸の奥が温かくなるのを感じた。
「この店、なにを食べても本当においしいんだ。だから連れてくるならここだと思って予約したんだ」
「……ありがとうございます」
珠希は説明を繰り返す碧の困り顔に、ここまで必死になる必要はないのにと笑い声をあげた。
「私、実はこの間病院を訪ねた帰りにこのお店を見かけて、気になっていたんです。だから連れてきてもらえてうれしいです」
「だったらちょうど良かった。期待を裏切らないから、楽しみにしていて」
碧は珠希の誤解が解けて安堵したのか、ホッとした笑みを浮かべている。
その笑顔は楽器を前にわくわくしていたときと同じ笑顔だ。
宗崎は言い淀み、掴んでいた珠希の手を引き寄せふたりの距離を詰める。
「そ、宗崎さん……?」
突然目の前に端正な顔が現れ、珠希は息をのんだ。
「あ、悪い」
碧の手がゆっくり離れていく。
珠希は腕に残る体温を確認するように、反対側の手でその手を抱きしめた。
「痛くないか? 申し訳ない」
碧は珠希の様子に慌て、痕が残っていないかと気にかけている。
「あ、平気です。大丈夫」
大げさに手を振って見せる珠希に、碧はホッと表情を緩めた。
「とにかくこの店は一緒に食事がしたくて選んだってだけで、呼び出しは関係ないから」
「は、はい」
碧の言葉が、珠希には信じられない。
碧との再会を楽しみにしていたのは珠希の方だ。
見合いに家業の立て直しという裏事情があったとしても、珠希はただ碧に会いたかった。
遥香を交えて過ごした時間はわずかだったが、あの日から何度も碧を思い出しては会いたいと思っていたのだ。
まさか碧も珠希との再会を望んでいるとは微塵も想像していなかった。
おまけに店まで予約してくれていた。
珠希は胸の奥が温かくなるのを感じた。
「この店、なにを食べても本当においしいんだ。だから連れてくるならここだと思って予約したんだ」
「……ありがとうございます」
珠希は説明を繰り返す碧の困り顔に、ここまで必死になる必要はないのにと笑い声をあげた。
「私、実はこの間病院を訪ねた帰りにこのお店を見かけて、気になっていたんです。だから連れてきてもらえてうれしいです」
「だったらちょうど良かった。期待を裏切らないから、楽しみにしていて」
碧は珠希の誤解が解けて安堵したのか、ホッとした笑みを浮かべている。
その笑顔は楽器を前にわくわくしていたときと同じ笑顔だ。