エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
「両親が和合製薬を立て直すために、宗崎病院との関係を確固たるものにしたくて宗崎さんと私の結婚を押し進めた。……ということですよね」
「いや、それは……」
まるで事件の謎を解く探偵のように堂々と語る珠希に、碧は言葉を失い青ざめている。
「勘がいいのも考えものですよね。知らずにいれば悩むこともなかったのに」
「……勘がいいって、珠希のこと……だよな?」
「はい。あ、でも大丈夫です。お見合いの話があってすぐに気づいたので、今では冷静に受け止めてます。家族と一緒に乗り越える覚悟もできています」
つらつらと言葉を重ねる珠希を、碧はしばし呆然と眺めていた。
珠希の覚悟を知って、結婚について考え直しているのだろう。
これでようやく碧を面倒ごとから解放してあげられると、珠希はホッとする。
ホッとしたと同時に生まれた寂しさは、そのうち消えるはずだ。
もちろん、この部屋で交わしたキスのことも、思い出になるだろう。
なるに違いない。なってほしい……。
珠希は自分にそう言い聞かせ、どうにか気持ちを切り替える。
そのとき、碧の手元に控えていたスマホから着信音が流れてきた。ピロンという短い電子音の余韻に、ふたりは顔を見合わせる。
「悪い」
「いえ、かまいません。あ、あの、メッセージかなにかですか? すぐに確認してください」
また病院からの呼び出しだろうか。スマホを手にした碧の顔に緊張が走る。
「え? 紗雪?」
碧の驚く声に、珠希はぴくりと反応する。見ると碧が顔をしかめてメッセージを確認している。
「紗雪さん……? あ、この間の」
珠希は見合いの日に偶然顔を合わせた女性を思い出した。
ショートカットがよく似合う綺麗な女性だった。
たしかあの日五年ぶりに再会した、碧の学生時代の友人だ。
素っ気ない碧に食い下がりまた連絡すると言っていたが、宣言通り碧にコンタクトを取ってきたのだろうか。
「いや、それは……」
まるで事件の謎を解く探偵のように堂々と語る珠希に、碧は言葉を失い青ざめている。
「勘がいいのも考えものですよね。知らずにいれば悩むこともなかったのに」
「……勘がいいって、珠希のこと……だよな?」
「はい。あ、でも大丈夫です。お見合いの話があってすぐに気づいたので、今では冷静に受け止めてます。家族と一緒に乗り越える覚悟もできています」
つらつらと言葉を重ねる珠希を、碧はしばし呆然と眺めていた。
珠希の覚悟を知って、結婚について考え直しているのだろう。
これでようやく碧を面倒ごとから解放してあげられると、珠希はホッとする。
ホッとしたと同時に生まれた寂しさは、そのうち消えるはずだ。
もちろん、この部屋で交わしたキスのことも、思い出になるだろう。
なるに違いない。なってほしい……。
珠希は自分にそう言い聞かせ、どうにか気持ちを切り替える。
そのとき、碧の手元に控えていたスマホから着信音が流れてきた。ピロンという短い電子音の余韻に、ふたりは顔を見合わせる。
「悪い」
「いえ、かまいません。あ、あの、メッセージかなにかですか? すぐに確認してください」
また病院からの呼び出しだろうか。スマホを手にした碧の顔に緊張が走る。
「え? 紗雪?」
碧の驚く声に、珠希はぴくりと反応する。見ると碧が顔をしかめてメッセージを確認している。
「紗雪さん……? あ、この間の」
珠希は見合いの日に偶然顔を合わせた女性を思い出した。
ショートカットがよく似合う綺麗な女性だった。
たしかあの日五年ぶりに再会した、碧の学生時代の友人だ。
素っ気ない碧に食い下がりまた連絡すると言っていたが、宣言通り碧にコンタクトを取ってきたのだろうか。