エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
唇を覆い尽くす口づけがひどく息苦しい。
珠希はうまく呼吸ができず、つい咳き込んでしまう。
「悪い……」
碧はそうつぶやきながらも止まる気配を見せず、珠希の耳もとへと唇を滑らせた。
その瞬間、珠希の身体が大きくわなないた。
脱力する中、珠希はこわごわと両手を碧の背中に回して抱きしめ返す。
「悪くないです……全然」
苦しいほどに抱きしめられるのが、心地いい。
絶えず碧の体温を感じていた珠希の身体は、いつの間にかそれに慣らされ、こうして自分からも碧を求めるよう、変化していた。
息苦しさを覚えるほどの抱擁や、口内を弄ぶ熱い舌。
そして耳もとをかすめる甘い吐息もすべて。
珠希自身がそれらを求めていることを、思い知らされる。
初めて経験する感覚に身体がぶるりと震え、珠希は碧の胸に顔を埋めた。
「珠希?」
珠希の混乱を察した碧が、そっと珠希の身体を引き離し、お互いの目線を合わせた。
「顔が真っ赤。誰にも見せたくないんだよな、この顔」
親指で珠希の目尻を優しく撫でながら、碧は拗ねた口調でつぶやいている。
「あ、あの、今、なんて……? ちゃんと聞き取れなくて」
珠希は荒い呼吸を繰り返し、首をかしげた。
昂ぶる感情が引く兆しはまるでなく、頬が紅潮し目は潤んでいる。
珠希の艶のある表情に、碧は息をのんだ。
「珠希、俺はこの結婚を本物にしたい」
碧が切迫した表情を浮かべて口を開いたそのとき。
リビングから来客を告げるインターフォンの音が聞こえてきた。
「和合さん、久しぶりだね」
玄関のドアを全開にした珠希の目の前に、しばらくぶりの顔が現われた。
「河井さん、ご無沙汰してます。今日はお世話になります」
珠希は陽気な笑顔を浮かべる作業着姿の男性に、頭を下げる。
彼は珠希が働いている音楽教室の本部の社員で、二十年以上楽器の整備を担当している河井だ。
珠希はうまく呼吸ができず、つい咳き込んでしまう。
「悪い……」
碧はそうつぶやきながらも止まる気配を見せず、珠希の耳もとへと唇を滑らせた。
その瞬間、珠希の身体が大きくわなないた。
脱力する中、珠希はこわごわと両手を碧の背中に回して抱きしめ返す。
「悪くないです……全然」
苦しいほどに抱きしめられるのが、心地いい。
絶えず碧の体温を感じていた珠希の身体は、いつの間にかそれに慣らされ、こうして自分からも碧を求めるよう、変化していた。
息苦しさを覚えるほどの抱擁や、口内を弄ぶ熱い舌。
そして耳もとをかすめる甘い吐息もすべて。
珠希自身がそれらを求めていることを、思い知らされる。
初めて経験する感覚に身体がぶるりと震え、珠希は碧の胸に顔を埋めた。
「珠希?」
珠希の混乱を察した碧が、そっと珠希の身体を引き離し、お互いの目線を合わせた。
「顔が真っ赤。誰にも見せたくないんだよな、この顔」
親指で珠希の目尻を優しく撫でながら、碧は拗ねた口調でつぶやいている。
「あ、あの、今、なんて……? ちゃんと聞き取れなくて」
珠希は荒い呼吸を繰り返し、首をかしげた。
昂ぶる感情が引く兆しはまるでなく、頬が紅潮し目は潤んでいる。
珠希の艶のある表情に、碧は息をのんだ。
「珠希、俺はこの結婚を本物にしたい」
碧が切迫した表情を浮かべて口を開いたそのとき。
リビングから来客を告げるインターフォンの音が聞こえてきた。
「和合さん、久しぶりだね」
玄関のドアを全開にした珠希の目の前に、しばらくぶりの顔が現われた。
「河井さん、ご無沙汰してます。今日はお世話になります」
珠希は陽気な笑顔を浮かべる作業着姿の男性に、頭を下げる。
彼は珠希が働いている音楽教室の本部の社員で、二十年以上楽器の整備を担当している河井だ。