エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
珠希とは彼女が講師を始めてすぐに実家にエレクトーンを設置する際に担当してくれたのがきっかけで付き合いが始まり、もともとピアノ専攻でエレクトーンに詳しくなかった珠希にあらゆる機能を教えてくれた。
エレクトーンの調子が悪いときにはすぐさま駆けつけてくれる頼りになる職人だ。
今日は珠希のためにと碧が注文していた、エレクトーンの搬入と設置に来てくれたのだ。
珠希と碧が婚姻届の提出と結婚指輪の注文を終えた後、慌ただしく帰宅したのは、このためだ。
「早速運んでいいかい?」
「はい。お願いします。この部屋に設置してください」
珠希は玄関に近い一室に河井を案内した。河井は荷物ひとつない部屋に入った途端、驚きの
声をあげる。
「防音壁だよな、これ。え、工事を入れたのか? こんな高級マンションに住んでるし、い
わゆる玉の輿かい?」
がははと豪快に笑う河井につられ、珠希も笑い声をあげる。
「玉の輿……かもしれません。碧さん、あ、夫はお医者さまなので」
「冗談だよ、冗談。和合製薬のお嬢さんと結婚するんだ。相手の方が逆玉ってやつだな」
「そんなことないですから。誤解しないでください」
それも冗談とわかっていても、珠希がついむきになって反論したとき。
「今日は、よろしくお願いします」
碧が部屋に現われた。
「珠希の夫の宗崎です。配送予定では無理をお願いして申し訳ありません」
「いや、いいんだよ。結婚祝いにエレクトーンを買ってやるなんて粋なことする旦那、早く
見てみたかったんだ。どんな相手か心配してたけど、へえ、男前だね。和合さんも幸せだ。
最高グレードのエレクトーンをぽんと買ってくれるほどの男、滅多にいないよ」
「ですよね。そこまでのグレードは必要ないと思うんですけど」
珠希は肩を落とし、力なくつぶやいた。
碧をチラリと見るとにっこりと笑っていて、気後れしている珠希の気持ちは完全無視だ。
エレクトーンの調子が悪いときにはすぐさま駆けつけてくれる頼りになる職人だ。
今日は珠希のためにと碧が注文していた、エレクトーンの搬入と設置に来てくれたのだ。
珠希と碧が婚姻届の提出と結婚指輪の注文を終えた後、慌ただしく帰宅したのは、このためだ。
「早速運んでいいかい?」
「はい。お願いします。この部屋に設置してください」
珠希は玄関に近い一室に河井を案内した。河井は荷物ひとつない部屋に入った途端、驚きの
声をあげる。
「防音壁だよな、これ。え、工事を入れたのか? こんな高級マンションに住んでるし、い
わゆる玉の輿かい?」
がははと豪快に笑う河井につられ、珠希も笑い声をあげる。
「玉の輿……かもしれません。碧さん、あ、夫はお医者さまなので」
「冗談だよ、冗談。和合製薬のお嬢さんと結婚するんだ。相手の方が逆玉ってやつだな」
「そんなことないですから。誤解しないでください」
それも冗談とわかっていても、珠希がついむきになって反論したとき。
「今日は、よろしくお願いします」
碧が部屋に現われた。
「珠希の夫の宗崎です。配送予定では無理をお願いして申し訳ありません」
「いや、いいんだよ。結婚祝いにエレクトーンを買ってやるなんて粋なことする旦那、早く
見てみたかったんだ。どんな相手か心配してたけど、へえ、男前だね。和合さんも幸せだ。
最高グレードのエレクトーンをぽんと買ってくれるほどの男、滅多にいないよ」
「ですよね。そこまでのグレードは必要ないと思うんですけど」
珠希は肩を落とし、力なくつぶやいた。
碧をチラリと見るとにっこりと笑っていて、気後れしている珠希の気持ちは完全無視だ。