冷徹社長は幼馴染の私にだけ甘い
「昨日のあの男は一体誰だったんだ?」
玄関で靴を履きながら優が凛子に問う。
「へ? 男?」
「凛子に触れてた男だよ。あぁ、思い出しただけでも腹が立つな」
優はクソっと小さく呟き、顔を少し歪ませた。
「あぁ! 男! そういえば本当に誰だったんだろう? 同期だったとは思うんだけど全く名前とか思い出せなくて」
すっかり同期の男の存在を忘れていた。それほど凛子にとって他の男は道端にコロンと落ちている石ころのようなものなのだ。
「ははっ、そっか。なら、いいけど。凛子、これ昨日のお弁当美味しかったよ。俺の好きなものばっかり入ってた。ありがとうな」
靴を履いて立ち上がった優は満足気に笑い、自分の鞄の中から昨日凛子が投げ捨てたお弁当箱を出してきた。
「え……食べたの?」
凛子は目を丸くして優を見る。中身は一度麗奈にぶつかった時にぐしゃぐしゃになった。極めつけは優の目の前で投げ捨てたのだから中身は相当なものだったと思う。それを、優は食べ、美味しかったとまで言ってくれた。受け取ったお弁当箱は綺麗に洗われている。