クレオ*̣̩エシス
ιστορία*.2─P.S.─
夜。深夜は布団に入りながら、隣に椅子を設置している羽月に尋ねかけた。
「で、何するつもりなんだよ」
羽月は、長い白髪を珍しく左肩に向けて流し、シュシュで結んでいた。
手には深夜が持っていた推理小説が抱えられている。
深夜のベッドの隣に椅子を置き、ゆっくりと腰掛ける。
「うーん……。正直効果があるかわかんないから、内緒。深夜はいつも通り、寝ていいよ」
それだけ言うと、羽月は本の世界に没頭し始めた。
訳が分からず、とりあえず寝ることに専念した深夜だったが、今日過去のことを話したばかりだったので、虐待の現場が鮮明に浮かび、なかなか寝付けなかった。
しかし暫くすれば、泣いた疲れが出たのか、徐々に眠りに引き込まれていった。
本のページをめくる音が、規則的に鳴り響く。
そんな時だった。
「っ───あぁっ……!」
いつものように、深夜が悲鳴を上げ始めたのは。
「来た────っ」
羽月はこのときを待っていたのだ。
読んでいた本を閉じ、立ち上がる。
いつもより夢が鮮明なのだろうか、うっすら涙をうかべた深夜に、キュっと唇を引き結ぶと、羽月は深夜の手を優しく握った。
「大丈夫、大丈夫だよ。…私が、いるよ。だから、安心して」
優しく語りかけるように。
自分の心を、彼が解き放ってくれた時のように。
「あなたは、私が守るから」
そう言い切ると、その言葉が聞こえていたのだろうか、段々と悲鳴をあげることがなくなり、穏やかな寝息が聞こえ始めた。
「良かった…───」
ホッと息を着くと、羽月はスタンドライトを消すのも忘れ、眠りについたのだった。
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翌朝深夜が目を覚ますと、羽月がベッドに突っ伏すように寝ていた。
しっかり握られている自分の手を見て、深夜は妙に納得がいった。
───昨日、俺を助けてくれたのは、羽月だったんだな。
昨日の夢は、いつもと同じ、暗闇の中で痛みと苦しみが渦巻く悪夢だった。しかし、突然その中に一筋の光が差し込んだのだ。
恐らくその光は。
「羽月なんだろうな」
羽月を起こさぬように、そっと布団から抜け出すと、優しく羽月を横抱きにし、ベッドへ寝かせた。
コンコンッ
控えめにドアがノックされる音に続いて、ドアを開けて入ってきたのは、幽見だった。
「あら?羽月ちゃんまだ寝てるの?」
深夜が起きたのも、いつもより遅い時間だった。
羽月のおかげでよく眠れたからだろうか。
しかし、その彼女が寝不足とは。
「はい。昨日、俺の為に遅くまで起きてたみたいで……」
「そうだったのね」
そう言った幽見の顔は、とても優しかった。
「もう少し、寝かせておいてあげてください」
そう言って笑った深夜の顔は、とても清々しくて。
その日から、深夜が悪夢でうなされることは、なくなったのだった。