誓ったはずの、きみへの愛

 そんなことより、と制服のままベッドに飛び乗り早速手紙を開封する。
 上質な紙に書かれた自分の名前に、それだけで胸が高鳴った。
 中には簡潔な文章が並ぶ。お見舞いへのお礼、そして必要があって探し物をしていること、忙しくしているからしばらく会えないこと、体調は回復したから心配いらないこと、それから『キャンベル嬢のことを考えない日はない』だなんて……!

 オスカー様があたしを想ってくれているのは前々からわかっていたけど、こんなにも直接的な言葉で伝えてくれたことはなかった気がする。
 真面目なのは彼の取り柄だけど、ちょっとばかりもどかしく思っていたのは確か。メリッサ様との婚約解消から一年が経ったし、あの人はいなくなったし、そろそろ解禁のつもりなのかもしれない。

 可愛いレターセットを取り出し、高揚した気分で机に向かう。
 親愛なるオスカー様。いつも優しく笑みかけてくれる姿を思い浮かべる。

 お忙しいなら仕方がない。彼だって会いたいのに会えなくて、手紙を持たせた使用人を学園まで走らせてくれているのだもの。会えない時間が愛を育てる、なんて話もどこかで聞いたような。

 机に頬杖をつき、本棚に並ぶ思い出の品たちを眺めては幸せに浸った。
 出会いの場となったパーティーの招待状、素敵だねと褒めてくれたリボン、ドレスを汚された際に差し出してくれたハンカチ、守ってくれた時に落ちた彼のジャケットのボタン、お揃いの筆記具、彼のために手に入れたお気に入りの香料のボトル、一緒に食べたお菓子の小箱、他にも細々と。

 あたしも想いを込めた手紙を差し上げなくては。ますますの恋心を募らせてもらえるように。

 だけど、会えないままに季節は変わる。
 手紙でのやり取りは繰り返していたけど、返事を待つ時間ももどかしく、オスカー様からのお手紙が届くまでの間に二通三通と送る頻度は上がっていった。
 急かしているわけじゃないんです。でも早く返事をしてほしい、叶うなら会いたい!

 そうしてようやく『収穫感謝祭でお会い出来るのを楽しみにしています』と再会を約束する言葉が届いた。

 収穫感謝祭はその名の通りの行事。王都では冬が近づくと領地に帰るのが困難になる人もいるからと、秋の始まりに行われる。転送門が運用されている現在ではそうそう帰領出来ないなんてことはなくなったというけど、これも古くからの決まりみたいなものらしい。うちの領地ではもう一ヶ月ほど経って収穫作業が落ち着いてからの行事だった。

 城下では各地からやって来た露店がたくさん並んでにぎわう。収穫を祝うお祭りだけに食べ物を扱うお店が多くて、夜には食べて呑んで歌って踊って騒いでと、時間が進むほどに盛り上がっていくものだという。
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