【書籍化・コミカライズ】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

 ずっと会えなくなる訳でもないのに、離れがたく思いながら顔を上げると、ピョコンッと一束髪の毛が跳ねてしまっているのが見えた。

「……ふふ!」
「どうした? リティリア嬢」
「今日も髪の毛が、跳ねていますよ? 少しこちらに寄ってください」

 大きく身体を曲げてこちらに頭を指先で整えると、サラサラした髪の毛は簡単にあるべき位置へと戻った。

(私の髪は、癖があるからうらやましい……)

 そんなことを思いながら、マントを拾い上げて差し出す。

「しかし、リティリアも髪の毛が跳ねているぞ?」
「そうですね……。収まりそうにないから、今日は三つ編みにするしかなさそうです」
「はあ。カフェ・フローラにいる三つ編みの可愛いリティリア……。見たいな」
「ふふ。いってらっしゃいませ」
「ああ、行ってくる」

 こうして、今日の朝も慌ただしく過ぎていく。
 手早く髪の毛を編んで、前髪に騎士団長様に貰った小さな髪留めをつける。
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