【書籍化・コミカライズ】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
キラキラと光る小さな宝石は、まるで騎士団長様の瞳みたいだ。
「……行ってきます」
小さく呟いて、私はカフェ・フローラへと向かうのだった。
***
お店に着く。今日のテーマは、雪の結晶と雪だるまのようだ。
至る所に雪の結晶がデザインされているけれど、いったいどんな場所を参考にしているのだろう。
雪だるまは触れると冷たさまで再現されているけれど、座ったら冷え切ってしまいそうな雪の結晶そのものみたいな椅子の座面は、これっぽっちも冷たくはない。
今朝は、いつもより少し早めの出勤だ。お客様がまだ来る時間ではないのをいいことに、ためしに座ってみる。
「不思議。雪の上に座り込んだときみたいに柔らかい……」
外も店内も暖かいけれど、見た目のせいで寒いのではないかと錯覚してしまいそうだ。
「今日は、温かいメニューが多く出るかしら? 雲の欠片が浮かんだホットココアを本日のオススメにしようかな」
雲の欠片を魔法で固めて、甘く味付けをしたものは、ココアにもカフェラテにもとても良く合う。
フワフワした食感と、ほんのりした甘さの雲の欠片を青いサイダーに浮かべるのも捨てがたい。
(まるで、真夏の入道雲みたい。そうね、真夏になったらメニューに加えようかしら?)
そんなことを思いながら、私は着替えのためバッグヤードへと向かったのだった。


