継母に永遠の眠りの呪いを掛けられましたが、解呪の力を持つ婚約者が訪れることなく二百年の月日が流れて、自力で目覚めた姫は私です。
真っ直ぐな瞳に見つめられたまま、青年の口からの答えを待つ。
しばらくの間、見つめられ身じろぐ私に青年は何処か楽しそうに笑った。
「ははは。本当に可愛らしいお姫様だ」
「あ、あの……」
「驚かしてごめん。ようやく本当のこの姿で会いに来れた」
ゆっくり近づいてくる顔に今にも心臓が飛び出しそうな思いでいると、唇に優しく温もりが触れた。
長い睫毛の下で煌めく青い瞳に、見つけた一つの答えを口にする。
「アーモス……?」
その名前に反応した彼は、今度は覆いかぶさってくると力強く抱きしめた。
伝わってくる熱と鼓動が重なりあっては、混じり合う。
「ああ……そうだ。ずっとずっと待たせてごめんな」
全身を確かめるように撫でるアーモスの手は、大切な物を壊さぬように愛しむように優しい。
少し長めの黒髪は、彼の羽と同じ色。
そっと撫でると、長い指が今度は私の唇の輪郭をなぞる。
「こうしてまたレティアに触れるなんて夢みたいだ」
嬉しそうに微笑むアーモスにまたしても心臓が大きく跳ねる。