竜人様に拾われました~転生養女は現世でも妻として愛されたい~
「ねぇ、きずな君」


 逢璃が俺を見上げて笑う。


「もしも生まれ変わったら、また一緒になろうね」


 その時、風が音を立てて流れた。
 俺は思わず目を見開き、逢璃に向かって手を伸ばす。ほんの一瞬、逢璃の輪郭が揺らいだような、そんな気がした。抱き寄せて温もりを確認してから、ほっと安堵の息を吐く。


(逢璃はいる。ここに――――俺の側に居る)


 生まれ変わっても一緒になりたい――――そんな風に言われるのは、何も今日が初めてじゃない。その度に俺は『そんなの当たり前だ』と、そう思ってきた。

 俺が逢璃を探さないわけがない。求めないわけがない。
 俺は逢璃がいないと息もできないのに。逢璃にはそれが分かっていないらしい。


「生まれ変わっても、またきずな君のお嫁さんになりたいな」


 逢璃がそう言って笑うから、俺も目を細めて笑った。


(絶対一緒になるよ。何度でも。何があっても)


 俺が逢璃を幸せにするから。必ず、幸せにするから。
 そんなありったけの想いを込めて、俺は逢璃を抱き締める。


「きずな君、わたしの旦那様になってくれてありがとう」


 そう言って逢璃は満面の笑みを浮かべた。俺は胸が一杯で言葉が上手く出なかった。嬉しくて幸せで堪らないのに、それを上手く逢璃に伝えることができない。


(一生掛けて、必ず伝えていくから)


 愛情も、感謝も、この幸福感も。全部全部、大切に伝える。逢璃の笑顔を絶対に守り抜くと、俺は自分自身に誓う。


 そんな想いがその日、呆気なく打ち砕かれることになるとも知らずに。
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