月下の君には秘密です。


「…後輩ちゃん?」

紗季は『はぁ?』と首を捻る。


「あれ?違うの?」

小林は紗季にそう聞くと、俺の顔を見て『ねぇ?』と同意を求める。
それから言葉を続けた。


「…アッキー紹介した時に『偵察』って言ってたから。アッキーに告白した後輩ちゃんとの仲を取り持つのかなぁ~、と。」

そうそう…
紗季が俺たちに近付いたのは、そうゆう事かな~…と。

俺が『タコさんウィンナーが好き』とか、どうでもいい情報を流されちゃうのかな~、と。
薄々思っていたわけで…。


「――あぁッ!あはははッ!」

紗季は、きょとんとする俺たちの横で大口を開けて笑った。


「なるほど、なるほど!…確かに。最初はね~ッ?可愛い後輩を振りやがった奴がどんな奴か知りたくて!嫌な奴だったら、ジワジワ苛めようと~…」

……やっぱり。
俺をシメる気だったんだ…。

紗季はケラケラと笑いながら、小林に片手をヒラヒラと振った。


「でもでも~ッ!アッキー知れば知るほど『可愛い』じゃん?」

「……可愛いって言うな…」


「はぃはぃ、照れないの。後輩は呼ばないよ~、あたしが気に入っちゃったんだから!」

……は?
気に入っちゃった?


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