月下の君には秘密です。


「…紗季ちゃん?」

小林ですら、
『へ?』と戸惑う。
俺は弁当の箸を止めたまま固まっていた。


「…まぁ、後輩には悪いかな~?とは思うけど~。」

「…それは結構ヒドイんじゃ…」

小林がそう遠慮しがちに言ったのに対して、紗季は『なんでよ?』と首を傾げた。

この子、女王様…?
俺、おもちゃ…?


「告白して、断られて~。そこで諦めて行動起こさない子は、そこまでの気持ちだったんだと思わない~?」

紗季はそう言って俺を見たけど、なんて返したらいいのか分からなくて…。
俺は固まったまま。

こうゆう話を、恋愛初心者の俺に振らないで欲しい。


「だって、その後輩と話した事ある?アッキー。」

「…いや?その時に、一回だけ…だよなッ?」

俺はオドオドと小林の顔を見て確認する。
小林も小さくコクコクと頷いた。


「…ほら!見た目だけで中身知らずに『好き』って、あたし分かんないし。すっごい好きなら、自分から動くでしょ!?」


本当に…
井上と違うタイプの子。

サバサバしているというか、
自由気ままに生きていて、見ている分には気持ちが良いんだけど…。


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