君を愛せないと言った冷徹御曹司は、かりそめ妻に秘めた恋情を刻む
「すまない。たしかに紳士的なやり方ではなかったね」

彼は自分の非をあっさりと認めた。

「だが、今の私があるのは君のお母さま――泰世さんのおかげなんだ。だから君にできる限りのことがしたい」

母に並々ならぬ思いを抱いているような、意味深な口ぶりだった。

正直、絢子さんが亡くなったあと、母と桐嶋のおじさまが会っているところは見たことがあり、ふたりが潔白だという証拠はない。

それに彼が母の葬儀を執り行ってくれたことも、お墓を建ててくれたことも、よくよく考えれば赤の他人がそこまでしてくれるものだろうか。

勘繰り始めるときりがなく、頭がおかしくなりそうだった。

「……どうしてそれが私と郁人さんの結婚につながるのですか? お手伝いさんとして雇ってもらえるなら喜んでお受けします。でも結婚は絶対に無理です」

改めてきっぱりと言い切った。

私はあの日、郁人さんに惹かれた。優しい人だと思った。こんな再会のしかたでなければ、彼との結婚を望んだかもしれない。

でもこの状況で一緒になってもうまくいくはずがないのだ。

それだけは明らかだった。

「絶対に無理、か」

桐嶋のおじさまは私の質問には答えてくれず、落胆の色を浮かべた。

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