夏色モノクローム
いい大人の彼は、己が抱え込んでいるものに彼なりに上手に折り合いをつけて、つきあっているのだとは理解している。
だから今までは、彼の内面には踏み込んだらいけないと思っていた。それはただのお節介だと思っていたからだ。
でも、勇気を出して踏み込まなきゃ、これ以上彼には近づけない。里央も――そして、彼も、臆病なままだ。
「志弦さ――」
と、呼びかけようとしたところで、がららら、と、玄関戸が勢いよく開く音が聞こえた。
「おおい、兄さん! 入るよ!」
瞬間、ふたりして息を飲む。
知っている声だ。心臓が縮み上がるような心地がしたけれど、驚いたのは志弦も同じらしい。
舌打ちしながら、里央の両腕を掴む。
里央がこんな時間に彼の家にいること自体、見られたらまずいと考えているようで、かなり焦っているようだ。
「アイツ、いつも急すぎるだろ!?」と吐き出しながら、すぐそこにある部屋の戸を開け、里央を押し込む。そして、ぴしゃりと戸を閉められ、里央の視界は閉ざされた。
すぐあとに、「あ」という彼の声が聞こえたけれど、戸惑うのも一瞬のこと。すぐに彼は、玄関の方へと走って行ったようだ。
里央も音を立ててはいけないと、息を殺す。
それから戸を背にして、その場にずるずるとしゃがみ込みながら前を見て――言葉を失った。
だから今までは、彼の内面には踏み込んだらいけないと思っていた。それはただのお節介だと思っていたからだ。
でも、勇気を出して踏み込まなきゃ、これ以上彼には近づけない。里央も――そして、彼も、臆病なままだ。
「志弦さ――」
と、呼びかけようとしたところで、がららら、と、玄関戸が勢いよく開く音が聞こえた。
「おおい、兄さん! 入るよ!」
瞬間、ふたりして息を飲む。
知っている声だ。心臓が縮み上がるような心地がしたけれど、驚いたのは志弦も同じらしい。
舌打ちしながら、里央の両腕を掴む。
里央がこんな時間に彼の家にいること自体、見られたらまずいと考えているようで、かなり焦っているようだ。
「アイツ、いつも急すぎるだろ!?」と吐き出しながら、すぐそこにある部屋の戸を開け、里央を押し込む。そして、ぴしゃりと戸を閉められ、里央の視界は閉ざされた。
すぐあとに、「あ」という彼の声が聞こえたけれど、戸惑うのも一瞬のこと。すぐに彼は、玄関の方へと走って行ったようだ。
里央も音を立ててはいけないと、息を殺す。
それから戸を背にして、その場にずるずるとしゃがみ込みながら前を見て――言葉を失った。