婚約破棄したい影の令嬢は
これ以上アイネがフィルズの側に居たら、フィルズは己の身を滅ぼしてしてしまうと思ったからだ。

アイネはフィルズの幸せを心から願っていた。

アイネと共にいた事で全てが狂ってしまった。
もしあの時、アイネが姿を見せなければフィルズは幸せに暮らせていたのかもしれないのに‥。


アイネはフィルズに何も告げずに魔法を掛けるつもりだった。


その日の夜‥‥何も知らない筈のフィルズは魔法を掛けられて強制的に眠りにつくはずだった。
けれど、フィルズは必死にアイネの魔法に抗った。

アイネはフィルズの手を握りながら更に力を込めようとしたが、フィルズの苦痛に歪む顔にアイネの手が止まった。

フィルズはアイネの頬に、そっと指を滑らせながら必死に訴えた。


「1つだけ、お願いがあるんだ‥」

「‥‥」

「もし君と僕の瞳が‥もう一度交わる事があったら」

「‥っ!」

「この記憶を思い出させて‥?」


アイネは静かに首を振った。
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