初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
私の言葉を聞き、ノーマン様は唇を噛まれました。


「ガルテン伯爵家の領地は、どうされるのですか?」

(もう貴方には、何の関係もないでしょうに)


「従弟のギリアンが養子に入ってくれましたの
 綺麗でしっかりした婚約者にも恵まれましたし領地の事は義弟夫婦にお任せ出来ると、父も私も安心しておりますわ」


我が伯爵家とギリアンの養子縁組の話もご存じないなんて。
本当に今のノーマン様はご実家とも社交界からも、絶縁されているのでしょう。

(もう充分にお相手をしたわ
ノーマン様もご満足でしょう)

これ以上、もう話すことはございません。
そう思って、私はこの場を離れることに致しました。


「今夜は懐かしいお顔を拝見できて、とても嬉しかったですわ
 それでは、ごきげんよう」

軽く膝を折りお暇のご挨拶をするのですが。
それがおわかりにならないのか、
気付かない振りをされているのか、存じませんがノーマン様は私に身を寄せてこられました。

(やめて!近づかないで!)
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