初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
「そうそう、クリスティンの別荘がある湖、
 透明度が高い事で帝国でも有名でね?
 それが何故か最近、水が濁って来ているらしい
 まるで湖が沼になったみたい、だって」


……教えないのは知る必要がないから。
知る必要のない話は聞かない方がいい。

キャルの言葉を思い出しました。


「シャーロットは理解するのが早くて助かるってことを、前に言ったかな?」


身体を冷やしてはいけないと、殿下が仰って。
サンルームには暖房が入っていて暖かいのに。

私は少し震えていました。




「これからもお茶会を続けようと殿下は仰って
 いましたけれど……」

私が送っていただく馬車の中で、そう言いかけると。
エドガー様はとても静かな声で、仰られました。


「今日は辛い話が多かったですね……
 お付き合いしていただくのは、もう無理ですか?」

「いえ、殿下からは最初に私の情報を教えてくれと言われたのに、
今は教えていただくばかりで……申し訳なくて」

「殿下は貴女と話すことで整理出来ると、仰っていたでしょう?
 私も助かっています」


エドガー様の深いグレーの瞳が正面から私を見つめていました。
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