聖女様と老執事
クリスティアル王国の周囲の森に魔物が大量にいるのは、木を散々伐採してそこに住む昆虫や動物たちを全部追い出してから植林をしたからだ。
魔物たちは、誰もいなくて空いている森があるから住み始めただけである。
魔物たちは、昆虫や動物たちが来たらすんなり同居を認める懐の深さがある。
住処の森を害そうとする人間には容赦せず見せしめに食べるし、敵の人間を排して森を広げようともする。
そんなあの森は植物の種類も多い。
魔物の行動心理はもう二百年くらい前にはわかっていたことなのに、国も教会もひた隠して人々を散々犠牲にしている。
いや、犠牲になったのは人以外なのだろう。
この国の人間が全員いなくなれば、人間以外の動植物の楽園になるのだろう。
国も教会も滅べばいいのに。
ずっとそう考えていたのに、私はこれからもずっと魔力を捧げる。
「ママぁ! 抱っこ!」
スピネルに似た愛しい息子を死なせたくないから、私はこの国を守る。


