【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)
 やっぱり、そうよね。
 エルドラッドは何のために、エルモを捕まえようとしているの?

 考えても答えがみつからず――頭が混乱するばかり。

 気持ちを落ち着きたくて、グルにいれてもらったコーヒーを一口飲んだ。ホッとする味……この先もずっと、このコーヒーをグルのそばで飲みたい。

「……い、いや、私は捕まりたくない。あんな場所には戻りたくない……グルさんの側にいたい」

 心が重く、苦しくなる。
 あの人達に、酷いことは言われたくない。

「大丈夫だ。チェリチタの木の下で俺はエルモを守ると誓った。絶対にアイツにも王子なんかに渡さない」

「うれしい、グルさん……」
 
 うれしくて気持ちが昂ぶりテーブルから勢いよく立ち上がり。飛びつくエルモをグルは力強く抱き締めてくれた。

「エルモ、話してくれてありがとう」

 グルが近づくのが分かった、それに合わせて目を瞑ると唇がかさなる。

「……んっ、グルさん」
「エルモ……もう少し」

 長く続いたキスに互いに息の上がり、コツンと、グルのおでこがくっ付く……グルは深い息を吐き。

「俺は、すごく、エルモが好きだ」
「私も、グルさんが好き」


 もう一度、唇が触れ合いそうなときに……


「「グル、エルモちゃん、聞いてくれぇーー!」」


 大きな音出して勢いよく玄関を開けた、グレが転がり込んできて、お構いなしに喋りだした。

「グル、エルモちゃん、聞いてくれよ。チェリチタの木に花が大量に咲いたんだー! オレ、嬉しくって森から走ってきた!」


「……おう、それは良かったな、兄貴」
「よかったね、グレちゃん」


 グレは、グルとエルモ。
 二人抱き合う姿を見て。

「……? あ、ああ、そういうことかぁ! ……お邪魔しました! オレ、村のみんなにも伝えてくる!」

 ニンマリ笑ってソッと玄関を締めた。

 そのあとグレは村のみんなに、花が咲いたとだけいえばいいのに「グルとエルモちゃんがキスすると、村のフェリチタの木に花が咲くんだ!」「二人の愛が花を咲かせた!」といいまわった。

 それ以来――チェリチタの木に花が咲くと、グレは大喜びで村のみんなにいい回るものだから……バイトにいく途中、帰りに出会った村のみんなに「エルモちゃん、ありがとう!」「グルとお幸せに」と、感謝の言葉を言われてしまい。

 嬉しいやら、恥ずかしい気持ちになるのだった。
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