【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)
 今日も大勢の人で賑わったパン屋さん。
 そのバイトの終わりエルモは驚いていた。

「こんなに高級なチョコパンを貰ってもいいのですか?」

 パン屋のおじさんとおばさんにチョコがふんだんに練り込み、中にはたっぷりのチョコクリームが入ったお店の一番人のパンを貰った。

「いいよ、わたし達が作ったパンをあんなに美味しそうに食べてくれて、こっちは作り甲斐があるよ」

「それにあんたが来てから、作ったパンが美味い」

「あら、あんたも思っていたの? わたしもだよ」

 ――私が来て、パンがおいしくなった?

 エルモはその言葉に焦り。

「ち、違います! ここのパンはどのパンを食べても美味しいです。おじさんとおばさんが腕によりを掛けて作っているからです!」

 と、パンの美味しさを力説した。

 エルモの言葉に喜んだおじさんとおばさんは、笑顔で大量のパンをふくろに詰めてくれたのだ。
 


 バイトからの帰りエルモはごきげんだった。

「このチョコパン、グルさん好きだから喜ぶだろうなぁ」

 彼の喜ぶ顔を思い浮かべ村の入り口まで来ると。

 家の方角から必死な顔で走ってくる、グルの姿が見えた。

(あんなに急いでどうしたの?)

「グルさん、なにかあったの?」

「………」

 ――彼に声を掛けても聞こえていないみたいで、もう一度呼んでみた。

「グルさん、グルさーん」 

「あ、エルモ」

 今度は聞こえたみたいで近寄ってくると、ひたいの汗を拭った。
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