【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)
「どうした?」

「ううん、何でもない。薬草はどれを採ればいい?」

 そう聞くと、グルは近くに生い茂る草を採ると、エルモに見せた。

「これだ、今日はアルテミシアを採りにきた。採取したものをばっちゃんと村の人が乾燥させて、フライパンで炒ってお茶にするんだ。村でも愛用されていて近頃は王都でも人気なんだよ」

 と、グルが見せてくれたのはエルモも知っているヨモギだった。

 ――へぇ、この世界にヨモギがあるんだ。

「わかった、これを採るのね」

 ふたり並んでヨモギを採取していた。
 すぐにグルが持ってきたカゴは『ヨモギ』こちらで言うと『アルテミシア』でいっぱい。
 
「よし、今日はこれくらいで、いいかな」

 もうすぐ日も暮れてくる「そろそろ帰ろうか」とグルと話していた。
 
「ギャーォォォーン」

 いきなり、動物の鳴き声が森のほうから聞こえた。

 その声を聞き、グルは険しい顔をして森を見上げる。

「魔物か? エルモは俺のうしろに隠れろ!」

「グ、グルさん?」

 エルモを守るようにして前にでたグルは、気配を探るように森の入り口を見ている。

 ガサ、ガサガサとちかくの枯れ葉を踏む、足音がじょじょに大きくなり。

「キャフーン」

「な、なに?」
「きゃっ!」

 それはグルが見ていた、森の入り口の方からではなく。

 真横の草むらから飛びでてきた。
 
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