【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)

 ――それは二日前。王城でエルドラッドにお会いしたときのこと。

『なんだ、来ていたのか――僕はいまから、リリア嬢と過ごすから君は帰ってくれ』

 と、エルモに冷たい言葉を浴びせた。

(私は物語を知っているから。エルドラッドからの冷たい言葉は覚悟していたけど――本人の口からじっさいに言われると……あんがい傷付くのね)

『申し訳ございません。きょうは殿下にお会いするために来たのではなく、王妃様に呼ばれて来ただけですわ………殿下には連絡が伝わっていなかったのですね?』

『連絡? ああ、朝食のとき母上が呼んだといっていたな』

『よかった、おわかりいただけたようで。では王妃様との約束の時間ですので失礼いたします』

 礼をして背を向けた。


 ――ほんと疲れる。
 
 エルドラッドはエルモを見れば。
 自分のリリアに"言いがかりをつける"かもと、にらみつけてくる。
 悲しいけど……いまのエルドラッドは忘れてしまった。

 婚約者となった幼頃から、自分の時間をもてず王城へと登城をして。  
 王妃になる為にダンス、礼儀、笑い方、歩き方、話し方、テーブルマナーとたくさんの教育を受け、努力をしてきたことを。

 そうでなければ。

 他の貴族がいるまえで婚約者でもないリリアと寄り添い、陛下がえらんだ婚約者のエルモに帰れなど言えるはずがない。

 ほんと、自分のことしか考えていない。

(やっとできた一人息子だからと、陛下と王妃は殿下に甘く、その行為を許して黙認しているのも問題なのだけど)


 はぁ……ため息しか出ない。
 自分の両親にも疲れる。

 エルドラッドが舞踏会、晩餐会でエスコートしないときがあれば。

『お前が、エルドラッド王子殿下の心を捕まえていないから恥をかいた!』
『エルモ、よくも恥をかかせたな。しばらく部屋で反省しなさい!』

 と罵られて、頬を叩かれた。
 
 この人たちも、エルモのことは考えていない。

 誰も、私の努力を認めてくれない。
 悲しいけれど、これが現実だと受け止めなくてはいけない。
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