待てない柑士にひよりあり ~年上御曹司は大人げなくも独占欲が止められない~

 彼は手を止め、それから席を立つときに持ってきていた箱を私に差し出す。

「何ですか?」
「大事なものではないのか」

 開けられた箱の中には、あのとき置き去りにした片方のパンプス。
 綺麗に磨かれて、まるで新品みたいにそこに収まっていた。

「あ、ありがとうございます」

 私が受け取ろうとすると、柑士さんはそれを制止して、まっすぐ私を見て加える。

「ひより、逃げるなら今だぞ」

 突然名前を呼ばれて、さらに、そんなことを言われて、私の胸は大きくドキンと鳴った。

「……に、逃げるって?」
「ひとまわりも違う男と結婚なんて、ひよりは嫌じゃないのか?」

 思わずぐっと息をのむ。
 確かに、壮一の面影に似て、壮一と同じような年齢の人といつかまた付き合いたいなとは思っていた。でも――。
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