待てない柑士にひよりあり ~年上御曹司は大人げなくも独占欲が止められない~

 次の月曜、会社に行ってみると椎野さんが私に飛びついてきた。

「驚きました、まさか密石さんが、柑士兄さんの恋人だったなんて! でも密石さんと親戚になれるなんて、すごくうれしいです!」
「こ、恋人⁉ いや、なんで知って――」
「柑士兄さんは私の従兄ですから。父から聞いたんです」
「あ……、そう言えば……」

 椎野さんは専務の娘だ。
 専務は社長の妹の夫なので、社長の息子である柑士さんと椎野さんも親戚なんだと今更思い知った。

 そのとき、ちょうど壮一が通りかかる。
 椎野さんは壮一を呼び止め、私の前まで連れてきた。

「昨日言ったでしょう! 本当におめでたいよねえ」

 壮一は最初気まずそうに視線を逸らしたが、まっすぐ私を見て微笑む。

「お、おめでとう。よかった。同期が無事に幸せになれそうで安心した」
「……ありがとう」

(安心したってことは、やっぱり壮一は、後ろめたかったんだよね)

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