怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】
「父はこの家を売ったんだよね?」

「はい。あのあとすぐ、とある資産家に売却されました。本当は大規模なリノベーションの予定だったそうです」


 だから家具が全部なくなって部屋ががらんとしてしまったのだと、久米さんが両手を広げて強調した。


「ですが、束縒さんが買い戻されました」

「え?! 束縒がこの家を?」


 そんな話は初耳だ。
 私はひどく驚いて、目を見開いたまましばし固まってしまった。


「買い戻そうとしても相手が売らないと最初はゴネたとかで、かなり苦労されたようです。だけどそこは交渉術に()けていらっしゃる束縒さんだから、最後は話がまとまったそうで……」

「そんなの……全然知らなかった」

「すみません、束縒さんから口止めされていたのでお伝えできませんでした。本当にごめんなさい」


 しょんぼりと肩を落として謝る久米さんに、私は頭を上げてと肩をさすった。
 そういう事情があったのだから、彼女がそこまで詫びる必要はない。


「だけどどうして束縒は秘密にしたかったのかな?」


 もし話したら、私が申し訳なさそうにいつまでも気にすると考えたのだろうか。
 でもこの件は永遠に黙っているわけにはいかないはずだ。

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