怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】
「お庭もご覧になりますか? 外はもう暗いですけど……」


 この時期は日が暮れるのが早い。
 ここへ来たときには薄い藍色だった空も、あっという間に今は夜の装いに変わっていた。


「庭の照明をつけたら、ある程度は見えるよね」


 私の言葉を聞いた久米さんはにっこりと笑って椅子から腰を上げ、庭に面している窓を開けて外の明かりをつけた。


「今は冬なので、お花がなくてさみしいですけど。春が来たらまた咲きます」


 半年ぶりに庭の風景を見た私は、それだけでうるうると涙目になってしまう。

 明かりが(とも)った途端、それらははっきりと私の目に映った。
 母が愛したモクレンの木、私の好きなフヨウがそのままの状態で残っていた。
 荒れ放題かもしれないと覚悟していたのに、雑草ひとつ生えていないのはすべて久米さんのおかげだ。
 

「久米さん、本当にありがとう」

「泣かないでください。それに、お礼なら私ではなく束縒さんに」
 

 控えめな彼女はそう言うけれど、私は久米さんにもきちんと感謝を伝えたい。
 そしてもちろん、束縒にも。


「束縒さんは本当にすごい人です。それに、冬璃さんへの深い愛情がひしひしと伝わってきます。そんな方とご結婚されて幸せですね」

「私、愛されてるのかな?」

「これが愛じゃないなら、なんなんですか?」


 私は目尻ににじんだ涙を右手で拭いつつ、彼女の言葉にうなずいた。

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