怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】
「突然押しかけてくるなんて非常識ですね」


 私はふたりに近づいていき、憲一朗さんに向かって静かにそう言った。
 すると九住さんがギョッとして私の腕をそっと引っ張る。危険だという注意喚起だろう。


「九住さんは帰ってもらって大丈夫です。ふたりで話して解決しますから」

「社長! でも……」

「心配しないでください。終わったらメールしますね」


 私が笑みをたたえると、九住さんは困った顔をしながらも渋々うなずき、そのまま会社をあとにした。

 飄々とした態度の彼を目にし、私は溜め息を吐きつつ冷たい視線を送る。


「憲一朗さん、どうしてこんなことをするんです?」

「君と話がしたかった。会いたかったんだ」

「私は会いたくなかった」


 昔の私なら、会いたかったと言われたらうれしくて、素直に頬を赤くしてよろこんでいただろう。
 だけど今は違う。その言葉は迷惑でしかない。


「俺、奈緒とはもうダメみたいだ。アイツはあれこれこまかく追及するタイプだし、自分の好感度ばかりを気にしてる。結局、婚約者である俺のことはたいして愛してないんだ」


 そんな愚痴をこぼされても困る。私にどうしろというのか。

< 109 / 123 >

この作品をシェア

pagetop