怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】
「そこまでだ。俺の妻を侮辱するな!」


 いつの間にかやって来ていた束縒が、憲一朗さんの後ろ側から威嚇するような低い声を出した。
 どうやら私たちの今の会話を聞いていたらしい。


「お、お前っ……」

「友永 奈緒とはついに婚約解消か? だからって、昔自分に気があった女に今さら付きまとうとは。ずいぶん愚かだな」

「うるさい!!」


 私と話しているときはそこまで激高していなかったのに、核心を突いた束縒の言葉がグサリと来たのか、憲一朗さんは急に険しい顔になって怒りをあらわにした。
 大声を出された束縒はあきれたとばかりに小さく溜め息を吐く。


「本当は結婚なんかしてないんだろ? ふたりで口裏を合わせて俺を騙してるだけじゃないのか?」

「しつこいヤツだな。お前が信じようが信じまいがこの際どうでもいいが、俺たちはすでに夫婦だし、三月には盛大に式を挙げる。理解できたなら警察を呼ばれる前に消えろよ」


 憲一朗さんの真正面に立ち、束縒が至近距離でそう言い放った。
 声は荒げていないものの、束縒のほうが身長が高い分、相手を圧倒している。


「二度と冬璃に近づくな」


 憲一朗さんはギリリと奥歯を噛み、私たちに背を向けて立ち去っていった。 
 緊張の糸が切れた私は体の力が抜けて一気に疲れが押し寄せる。

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