怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】
「そうだ、冬璃、今度の休みに家具を見に行こう」

「え?」


 束縒の唐突な提案に私は小首をかしげた。
 なにか買いたいものでもあるのだろうか。


「新居で使う家具。ふたりでじっくり選んで気に入ったものを買えばいい」


 その言葉を聞いた瞬間、私は子どものように飛び跳ねたい衝動にかられた。
 あの家に住めるだけでもうれしいのに、ひとつずつ家具を選んで購入していくのはワクワクして胸が躍る。


「式と披露宴は親父が仕切るから従わざるをえないけど、新婚旅行と新居のことは俺たちで決めよう」

「うん。いろいろ考えてくれて本当にありがとう」

「それと、結婚指輪を買わなきゃな」


 再来月に迫ったサンセリテホテルでの結婚式と披露宴。
 ウエディングドレスだけは私の意見を聞き入れてもらえたけれど、それ以外はすでに一切合切が決められていた。

 私や束縒にはなんの相談もない。あるのは業務命令のような報告だけだ。
 特に披露宴は招待客を大勢呼んでいるため、葛城会長は自分の思うように進めたかったのだろう。

 この結婚が決まった経緯を考えたら私は文句を言える立場ではないので、不満や憤りの感情はひとつも抱いていない。
 だけど束縒は会長に対して含むところがあるみたい。
 意見を言うことさえも許されないなんて、私があまりにも不憫だと思ってくれたようだ。

 やはり束縒は包容力があって、とびきりやさしい。

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