怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】
『冬璃さんはあのお庭を気に入ってましたよね。お母様が大切に手入れしてらっしゃったので、私もそれを継承していたのですが。残念です』


 久米さんの気落ちした声が耳に届く。
 もうすぐ私の好きなフヨウの花が咲くころなのに。
 母が愛していた白いモクレンの木も、すべてなくなってしまうのかと考えただけで胸が締めつけられた。


「ダメ元で父に抗議してみます。教えてくれてありがとう」


 久米さんとの通話を切った私は、ムカムカとしながら父に電話をかけた。
 私がやめてくれと言ったところで、なにも変わらないと想像はついている。
 父はいつだってそうだ。私の意見など聞かない。


『もしもし。どうした?』

「家を売る気なの?! お母さんとの思い出が詰まってるのに!」


 気がついたら、開口一番スマホに向かってそう叫んでいた。
 私は決して気が短いわけではない。どちらかというと穏やかなほうだと思う。
 だけど父の考えにはついていけないところが多いので、どうしてもイライラしてしまうのだ。今回の件は特に。


『ひとりで住むにはあの家は広すぎる。久米さんが綺麗に保ってくれてたから、今ならそれなりの値で売れる』

「お父さん!」

『嫁いで出て行ったお前には関係ないだろう!』

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