怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】
 逆ギレをされた。
 私は娘なのに、父がここまで非情な人だとは理解できていなかった。
 母が亡くなり、兄弟のいない私にとっては、父が唯一の肉親だというのに。


「家は売らないでほしい」

『いつまでも子どもじみたことを言うな。葛城会長に融資してもらえたとはいえ、工藤に横領されて会社が厳しい状況は変わらない。だから家を処分してカネを作るんだ』


 父は私が反論できない理由でねじ伏せてきた。
 たしかに父の言い分もわかる。横領の件は、CEOとしてなにかしらの責任は取らなければならないだろう。


『家は売ると決めた。お前は口出しをするな』


 父はそう言って電話を切ってしまった。
 ダメ元で頼んでみたものの、やはり決定事項は変わらなかったかと気持ちが沈んだ。
 
 すぐに買い手は現れないだろうけれど、実家に置いている大事なものは、今の家に移動させておかなければ。
 気は進まないが、放っておいたらすべて勝手に処分されかねない。


 落ち込んだ気持ちのまま、仕事を終えて帰宅した。
 家の中は真っ暗で、束縒はまだ帰ってきていないようだった。

 リビングの灯りをつけ、ソファーにバッグを放り投げて、自身もそこへヘナヘナと座りこむ。

 今日はダメだ。父からの電話以降、実家のことが頭から離れない。
 考えてもどうしようもないのに。

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