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やわやわと、髪を撫でる手が気持ちいい。ふと目を開ければ、泣きそうな顔の駿介と目が合った。その駿介の奥に映る背景が自分の部屋ではなく、でも見覚えがあって、夢だな、と確信する。
自分の部屋で寝ていた千真が駿介の部屋にいるはずがないし、ましてや駿介が、こんな顔で千真を見るわけがない。駿介はいつだって、強気で、意地悪だったから。
「駿介さん」
夢だったら、多少大胆にもなれる。手を伸ばせば、当然のように夢の中の駿介は抱き締めてくれた。
「……仕事、辞めたいのか?」
どうしてそれを、と今さら驚くことはしない。
どうせ、旭に聞いたのだろう。仲がいいとは思っていたが、一緒に暮らすほどの仲だとは思わなかった。どっちが、とは言わないが、少しだけ、羨ましい。
「もう、疲れちゃいました」
「……そうか」
へにゃ、と顔を崩せば、駿介は悔しそうに唇を噛んで、千真の額にキスをくれる。それが少し物足りなくて、駿介の頬に手を添えれば、駿介は一瞬、迷ったように視線を泳がせたあと、唇にキスをくれた。
もしかしたら唇へのキスは、駿介の中で、一種の導火線だったのかもしれない。
軽く触れるだけのキスが深いものに変わり、自由の効かない右手の代わりに、左手が忙しなく千真の身体を這っていく。それに少しばかり痛みが伴って、苦笑した。夢なんだから、傷を消してくれてもいいのに。
夢の中でも続くその痛みは、昼間あったことを忘れさせてくれない。
じわり、涙を滲ませれば、駿介がそれに気づいて、唇で掬ってくれた。
「怖いか?」
「いえ、……大丈夫です」
これは、夢だから。夢から覚めたら、ちゃんと忘れるから。
だから、今だけは。
自分の部屋で寝ていた千真が駿介の部屋にいるはずがないし、ましてや駿介が、こんな顔で千真を見るわけがない。駿介はいつだって、強気で、意地悪だったから。
「駿介さん」
夢だったら、多少大胆にもなれる。手を伸ばせば、当然のように夢の中の駿介は抱き締めてくれた。
「……仕事、辞めたいのか?」
どうしてそれを、と今さら驚くことはしない。
どうせ、旭に聞いたのだろう。仲がいいとは思っていたが、一緒に暮らすほどの仲だとは思わなかった。どっちが、とは言わないが、少しだけ、羨ましい。
「もう、疲れちゃいました」
「……そうか」
へにゃ、と顔を崩せば、駿介は悔しそうに唇を噛んで、千真の額にキスをくれる。それが少し物足りなくて、駿介の頬に手を添えれば、駿介は一瞬、迷ったように視線を泳がせたあと、唇にキスをくれた。
もしかしたら唇へのキスは、駿介の中で、一種の導火線だったのかもしれない。
軽く触れるだけのキスが深いものに変わり、自由の効かない右手の代わりに、左手が忙しなく千真の身体を這っていく。それに少しばかり痛みが伴って、苦笑した。夢なんだから、傷を消してくれてもいいのに。
夢の中でも続くその痛みは、昼間あったことを忘れさせてくれない。
じわり、涙を滲ませれば、駿介がそれに気づいて、唇で掬ってくれた。
「怖いか?」
「いえ、……大丈夫です」
これは、夢だから。夢から覚めたら、ちゃんと忘れるから。
だから、今だけは。