ロマンスに道連れ



養護教諭浦野がいつも座っているキャスター付きの椅子に座ってぐるぐると回ってれば、やることがガキくさいと煽られたのでガキなんでと認めてやった。
少なくとも2年先を生きてるあんたよりはクソガキだろう。



「じゃあ本気で好きになったことないんだ?」

「記憶の限りはないっすね」

「じゃあこれからかあ」

「……や、ないっすね。自分が誰かに本気になってるのなんて想像するだけで寒いし」

「はは、びびってるだけじゃん」

「は?」

「“誰かを好きになる自分”が想像つかないから、怖いんでしょ?」



『わたしは本気で好きだったのに、』

中学生で初めて付き合った彼女は別れるときにそうやって俺の前でボロボロ泣いた。

璃月は違うんでしょう、わたしは璃月のことが本当に好きだけど、璃月はどうでもいいって思ってたんでしょう。

本気も何も、告白してきたのはそっちのくせに。一緒にいるには十分悪い気はしないし、手を繋ぎたいと言われれば繋いだし、キスだってそれ以上だって拒んだことはない。

嫌いだったらそんなことしねえよ、と思っていた。それが俺なりの好意だと思っていたけれど、よく考えれば嫌いな奴なんて相当な人じゃないといないから、要はこいつじゃなくても出来なくもないんだと思った。


俺の好きなんて所詮その程度なのだ。
さっき慌てて保健室を出て行った先輩も、俺に遊ぶことを教えてくれたふたつ上の地元の先輩も、嫌じゃないから触れるし、好きでもなければ嫌いでもないから一緒にいれる。


自分から求めるものは、恋愛感情ではないらしい。
同性の仲良い友達は、俺を見て呆れている。ちゃんと人を好きになることを知っているアイツは、好きな子としかできないと言っていた。


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