ロマンスに道連れ
「だって、わかんねーもん」
「うん?」
「莉子センパイは、好きな人いるんですか?」
「うん、いるよ」
「……へえ、誰?」
「それはもっと仲良くなったら教えるよ」
「仲良くなるつもりなんですか?」
「それはきみ次第じゃない?」
「……ふうん」
夏はあんまり好きじゃない。
暑いのは嫌だし、外出るだけで汗かくし、全部メンドクサイ。
そんなこと言ったら冬も寒いし厚着しなきゃいけないからめんどくさくて嫌いだけど。
でも彼女の嫌いは俺よりももっと嫌いなのだろう。
ちっとも焼けていない肌はそういうことなのか、ソファに畳んである長ズボンのジャージは、何となく見当がついた。
「―――じゃあさ、練習してみる?」
「なにを?」
「人を好きになること」
「……は?」
どういうことですか、
思わず椅子で動くのをやめてぽかんと間抜けな面して先輩のほうを見れば、ソファにもたれた先輩が楽しそうにこちらを見ている。
「最近毎日つまらなくてさ、好きな人にも振り向いてもらえる気がしないし、楽しいことないかなって思ってて」
「……それとこれと何が関係してるんですか」
「だから、ゲームでもしようよって」
ちっともぴんと来ないこちらに対して、彼女はうんうんと勝手に話を進めていく。
好きな人に振り向いてもらえない、彼女は本当に誰かに恋してるらしい。自分の感情を素直に認めている潔い女だ。
「きみはちゃんと本気で恋したほうがいいよ」
「……なんだし、それ」
「だからさ、わたしを好きになってみるのはどう?」
「………は?」