ロマンスに道連れ
空気が抜けるみたいな声を出した俺に、けらけらと楽しそうに笑う。
それからソファから立ち上がって、椅子に座っている俺にゆっくりと近づいてくる。
なぜだろう、何となく危機感を覚えて若干後ろに引いた。攻めてくる女とか、結構好きなのに。じりじり詰め寄る彼女はぴたり、俺の前で足を止める。
「練習台にしていいよ」
「……や、意味わかんないすけど」
「だから、璃月はわたしのこと好きになればいいと思うの」
「自分でめちゃくちゃなこと言ってるってわかりますか?」
「そう?彼女は欲しくないんだから、好きな人がいるわたしを一回好きになってみるのはありじゃない?」
「全然ありじゃない」
何を急に言い出したかと思えば、脳が終わってんのかと思うハチャメチャっプリである。高校3年生って、マジで大したことないんじゃねえの。
彼女はもちろん必要としていないけれど、そもそも俺は好きな人が欲しいって言ったわけでもない
「わたしは璃月とそういうことするつもり一切ないし、他の女の子みたいに簡単じゃないから手強くて燃えると思うんだけどな」
「なに客観的に話してるんですか、当事者っすよ」
「好きってね、敵わないほうが強くなるんだよ」
「………」
「振り向いてくれないほうが本気になると思うんだよね、璃月は今までみんな振り向いてくれたからこんなにひねくれちゃったんじゃない?」
「俺が追っかけろと?無理だろ」
「でも気になるし。いろんな子に手を出しちゃう璃月が、オンナノコに翻弄されるとどうなるんだろうって。わたしの見た目は100点なわけだから、ほかの女の子より好きになれる可能性って高くない?」
「や、莉子センパイだけは、ないっす」
「はは、今はね?」
そもそも誰のことも本気になったことがない俺が、はいでは好きになってくださいと言われて好きになれるわけもないし。確かに顔は好きだけど。