ロマンスに道連れ



「まあ、さっきよりは顔色良くなったな」

「ほんと?なんか2時間くらい寝た気がする」

「日差し強くなってきてるんだから体調管理は気をつけろよ」

「またお兄ちゃんと同じこと言う」

「預かりもんみたいなもんだからな」

「先生はわたしのお兄ちゃんではないですけどね!」

「俺はお前の先生であり友達の大事な妹ってわけだ」

「そういうことだ」

「ん。元気なら授業戻ってこい」


保健医の浦野は一昨年新任としてこの学校に来た新米養護教諭らしい。
保健室と言えばちょっと大人っぽくてエロイ女の先生じゃねえのかよと初対面で文句を言えば「クソガキの精神年齢に合わせて仲良くしてやるよ」と教師らしくない態度で返されてから何故か慕ってしまっている唯一の教師になってしまっている。

そんな浦野はセンパイの兄貴の同級生らしく、俺が入学するよりも前から保健室常連、おまけに保健委員までこなしているらしい。
浦野は本当に妹みたいな気持ちでこいつに態度とっているのがわかるのに。この人は違う好意を向けているのが駄々洩れだ。



広瀬莉子。
年がふたつ離れているだけで中身は俺と同レベル。

センパイを敵対するもっともの理由は保健室の取り合いであり、俺がここに来ると9割の確率であの一番奥の定位置に住み着いているので完全に完敗中だ。


「とっとと教室戻れよサボり魔センパイ」

「あんたこそとっとと戻りなさいよエロ猿」

「俺まだ来たばっかだ」

「体調悪くないでしょ」

「おなかいたいでーす先生休ませてくださーい」

「広瀬は体調良好、吉野は元気そうだし経過観察。また体調悪くなったら来い。ここは病人のみ滞在!ふたりで仲良く帰れ」


4限の授業真っ只中、ふたりそろって同時に保健室から追い出された。
浦野は俺らを見下ろして「お前ら二人いると仕事が進まねえんだよ」と呆れため息をついてぴしゃり、扉が閉まる。



「あーあ、りっくんのせいで追い出された」

「センパイにりっくんって呼ばれたくないんですけど」

「狙ってる女には呼ばせるくせに~?」

「うっぜ」

「あーあ。授業あと30分もあるじゃん、ヒマ」

「授業に戻る気はないんすね」

「だって璃月もないでしょ?」

「あると思う?」


ふたつも上だとは思えないくらいのガキっぽさは相変わらずで、平均身長程度しかない俺よりも低いこの人の目線は俺の鎖骨あたりだろう。
なんて考えていたらちっせーって言葉が声に漏れていたらしく上靴で思い切り踏まれた。



「しょうがない、璃月とサボるかあ」

「違う、それ俺のセリフっすよね」

「違うよ、相手してあげるのわたしだし」

「別に俺一人でもいいし」

「璃月クン素直に寂しいって言えないんだねヨシヨシ」

「誰もそう言ってねえからな!」

「ハイハイ。はやく日陰でバレずにサボれるとこ連れてって?」

「……要望おおいんすよ、いつも」

「メンドクサイ女ですみませんね?」

「自覚あって何よりです」


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