爪先からムスク、指先からフィトンチッド
環はすぐキッチンに隣接されている小さな木のテーブルにつく。涼介は湯を沸かし、使い込まれているがよく磨かれた銀のポットとグラスをだしてカチャカチャとお茶の用意をする。
やがて爽やかで甘い香りがうっすら漂い始めると、涼介はテーブルに置いたグラスへモロッコミントティーを注ぐ。
「どうぞ」
「ありがとう」
二人で静かに香りを嗅ぎ、リラックスしながらお茶を愉しむと時間の流れがここだけゆるやかな気がする。
「あなたはこんな雰囲気のところが好きなのね。カフェもそうだったけど」
「うん。俺は結構カントリーっぽい方が好きなんだよ。君はホテル慣れしてるのか、ああいうところの方がやっぱり好きなの?」
「好きでも嫌いでもない。でも施設育ちだから、別になんとも思わないだけ」
「ああ、そうなのか。じゃあこういうところは嫌い?」
「ううん。ここはとても素敵ね。温かい気がする」
「よかった。もっと君の事を聞いてもいいかな」
「いいけど、そんなに面白い話はできないわ」
「面白くなくていいんだ。ただ、なんていうか、もっと知りたいだけ。どうしてモデルを目指したのかとかさ」
「そうねえ……」
――幼い頃に家族を亡くし、親戚に引き取り手もなかった環は18歳まで児童養護施設で過ごすが、16歳の時にはすでに身長が175センチを超えており、非常に目立っていて、すでにモデルのスカウトがあった。特にモデルになりたいと思ったわけではないのだが、施設の仲間や職員がそれをぜひ生かすべきだと勧めた。運動神経も学力も平凡な環にはその道しか当時選択の余地がなかった。
しばらくモデル活動を行い、自分の力で生きてはいたが、日本での活動には限界があった。
日本で人気を得ようと思うには環の身長は高すぎて、しかも顔立ちが素っ気なさすぎるのだ。モデルとしてのスタイルや資質は申し分ないが、日本独特の可愛らしいアイドル性が足りない。そこで奮起してパリに単身で挑んだのだ。
「確かに君はあんまり日本人受けはしそうにないな」
「残念ながらね」
良く笑うようになった環は懐かしそうに当時を振り返った。
「しかし、そんなに小さな足でよくそこまで背が伸びたね」
「ああ、それはよく言われるけど、普通だったらもっと大きかったかも」
やがて爽やかで甘い香りがうっすら漂い始めると、涼介はテーブルに置いたグラスへモロッコミントティーを注ぐ。
「どうぞ」
「ありがとう」
二人で静かに香りを嗅ぎ、リラックスしながらお茶を愉しむと時間の流れがここだけゆるやかな気がする。
「あなたはこんな雰囲気のところが好きなのね。カフェもそうだったけど」
「うん。俺は結構カントリーっぽい方が好きなんだよ。君はホテル慣れしてるのか、ああいうところの方がやっぱり好きなの?」
「好きでも嫌いでもない。でも施設育ちだから、別になんとも思わないだけ」
「ああ、そうなのか。じゃあこういうところは嫌い?」
「ううん。ここはとても素敵ね。温かい気がする」
「よかった。もっと君の事を聞いてもいいかな」
「いいけど、そんなに面白い話はできないわ」
「面白くなくていいんだ。ただ、なんていうか、もっと知りたいだけ。どうしてモデルを目指したのかとかさ」
「そうねえ……」
――幼い頃に家族を亡くし、親戚に引き取り手もなかった環は18歳まで児童養護施設で過ごすが、16歳の時にはすでに身長が175センチを超えており、非常に目立っていて、すでにモデルのスカウトがあった。特にモデルになりたいと思ったわけではないのだが、施設の仲間や職員がそれをぜひ生かすべきだと勧めた。運動神経も学力も平凡な環にはその道しか当時選択の余地がなかった。
しばらくモデル活動を行い、自分の力で生きてはいたが、日本での活動には限界があった。
日本で人気を得ようと思うには環の身長は高すぎて、しかも顔立ちが素っ気なさすぎるのだ。モデルとしてのスタイルや資質は申し分ないが、日本独特の可愛らしいアイドル性が足りない。そこで奮起してパリに単身で挑んだのだ。
「確かに君はあんまり日本人受けはしそうにないな」
「残念ながらね」
良く笑うようになった環は懐かしそうに当時を振り返った。
「しかし、そんなに小さな足でよくそこまで背が伸びたね」
「ああ、それはよく言われるけど、普通だったらもっと大きかったかも」