大嫌いの先にあるもの【番外編】
信じられない話だけど、どうやら私は今、過去にいるらしい。
美香ちゃんと黒須と一時間話した結果、そう認めるしかなかった。

私は中三で、黒須と美香ちゃんは結婚していて、普段はニューヨークで生活している。Blue&Devilでのライブに出る為に美香ちゃんは黒須と一緒に日本に来た。そして今夜、そのライブに黒須に連れて行ってもらい、ライブの後に私はトイレで倒れたようだ。

簡単には納得できないけど、黒須の隣にいるのは確かに美香ちゃんだ。黒須もちょっと若いし。ロレックスの金時計なんかもしちゃってて。今の黒須なら絶対に自分の財力をアピールするような目立つ時計はつけない。

ちょっとギラギラした感じがするのは為替ディーラーとしてバリバリに稼いでいるからなのかな。でも、相変わらずスーツが似合ってカッコいいな。

美香ちゃんに向ける黒須の表情が凄く穏やかで幸せそう。結婚してまだ二年だもんね。新婚さんだよね。

それに比べて私に向ける表情はちょっと他人行儀な感じがする。なんか寂しいな。胸が痛くなって来た。この締め付けられる感じ、片思いの頃を思い出しちゃう。

そっか、私。また片思いに戻ったのか。

「春音、大丈夫?」
黙ったままベッドに横になっていると、美香ちゃんが心配そうに聞いた。
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