大嫌いの先にあるもの【番外編】
「どうしたらこの夢覚めるんだろう」
思わずため息が出た。

「どうしたら覚めるんだろうな」
黒須が途方に暮れたように空を見上げた。

「それとも夢じゃないのかな。だんだん現実のような気もして来た」
「簡単に発言変えるんですね」
「そう?」
黒須がこっちを見る。
二重のキリっとした目と合って心臓が熱い。
なんか呼吸も苦しくなって来た。

黒須の事、意識しないようにすればする程、意識してしまう。
胸に手をあて、とりあえず深呼吸をして気持ちを落ち着けた。

「黒須は今、幸せですか?」
「いきなり何だい?」
「答えて下さい。美香ちゃんのいるこの世界にいて黒須は幸せですか?」
「もちろん」
「じゃあ、夢だとしたらいい夢なんですね」
「そうだな。いい夢だな」

幸せそうに微笑んだ横顔に胸が締め付けられる。
私にとっては片思いの苦しい夢だけど、黒須にはいい夢なんだ。

このまま美香ちゃんが生きていた方がいいんだ。
黒須を幸せにするのは私じゃないんだ。

でも、この世界が私の知っている過去と繋がっているなら、一ヶ月後に美香ちゃんはニューヨークで強盗に殺されてしまう。

その事を今、黒須に伝えれば美香ちゃんを救えるだろうか。
美香ちゃんが生きている未来が来るだろうか。

「黒須、あのね」
「うん?」

黒須の顔を見て、心が揺れる。
美香ちゃんの事を伝えたら未来が変わってしまう気がして。
そしたら黒須とは永遠に恋人になれない。
私は一生片思いのままで、自分の気持ちを口に出す事さえも許されない。そんなの嫌だ。でも、大好きな美香ちゃんが強盗に殺されるのも嫌だ。

どうしたらいいの。
どうしたら……。
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