大嫌いの先にあるもの【番外編】
「いいな、春音。これから黒須先生の研究室」
講義が終わるとゆかが言った。

「黒須先生は春音の義理のお兄さんだもんね。うらやましい」
若菜が話に入ってくる。

「義理の兄……」
若菜に美香ちゃんの事を話していただろうか?

「春音のお姉さんジャズピアニストで素敵だよね。昨日のライブ良かったよ」
ゆかが感激するように言った。
昨日のライブ?

「本当、いいライブだったよね。お姉さんのピアノカッコ良かったし、飛び入りでステージに上がった黒須先生もピアノが上手でびっくりしちゃった。春音ちゃんも来れば良かったのに。お姉さん、春音ちゃんの姿がなくてちょっと寂しそうだったよ」
若菜が笑顔を浮かべた。

「そうだよ。春音も来れば良かったのに」
ゆかがつんと人差し指で私の肩をつっついた。
二人の話に全くついていけない。

昨日のライブって何?
なんで若菜とゆかが美香ちゃんの事を知っているの?

まさか、美香ちゃん生きてるの?
いや、そんな訳ない。美香ちゃんは私が中三の時に強盗に殺されて……。

あれ?

記憶が変わってる。

美香ちゃんは強盗に殺されていない。

どうして記憶が変わってるの?

「春音ちゃん、具合悪いの?」
若菜が心配そうにこっちを見た。
「えっ」
「春音、真っ青だよ」
ゆかも心配そうな表情を浮かべた。

「私、行かなきゃ」
リュックを掴んで席を立った。
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