大嫌いの先にあるもの【番外編】
「離してよ」
腕を掴んだままの黒須と向き合った。
胸元が大きく開いてて、太腿が見えるような服装を黒須にだけは見られたくなかった。今すぐ逃げ出したい。

「これを着なさい」
黒須がスーツの上着を脱ぎ、私の服装を隠すように肩にかけた。
すっぽりと上半身が黒い上着に収まり、黒須に抱きしめられたみたい。微かに香る甘いコロンの匂いに愛しさがこみ上がる。

触れたくても触れる事が許されない愛しい人の温もりに涙が出そう。
なんで私たちはこんなに複雑な関係になってしまったんだろう。

ただ美香ちゃんを救って欲しかっただけなのに。

「上着は着てた方がいいな」
ベスト姿になった黒須が私の頭から爪先までを確認するように見た。黒須に見られた箇所が全部熱い。

「勝手な事しないで」
上着を脱ごうとしたら強い力で抑えられる。力づくで抑え込もうとする態度に腹が立つ。

「痛い。離してよ」
「春音が抵抗するから離せないよ」
「強引な事するからでしょ」
「春音のそんな恰好、人に見せたくないんだ」
「そんなに私、酷い格好してる?」
「酷いね。男を誘うみたいな下品な服、春音には似合わない」
下品な服……。
自分でもわかっていたけど、黒須に言われたくなかった。

「どんな服着ようと私の自由でしょ!離してよ。これからデートなの」
「デートはキャンセルだ」
「勝手な事言わないで」
「いいからこっちに来なさい」
強く腕を捕まれたまま強引にバーから連れ出された。
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