大嫌いの先にあるもの【番外編】
黒須との距離と、質問の答えに戸惑っていると、答えを促すように落ち着いた声が説明を続ける。
「ホテルのバーでカウンター席の一番右側に座っていた男だよ。春音を待っているように見えた」
そんな所まで見られていたなんて恥ずかしい。
黒須にだけはどんな男性と会っているか知られたくなかったのに。
「確かチャコールグレーのわりと上等なスーツを着てたな。学生には見えなかったが。どういう知り合いなんだ?」
答えられる訳ない。寂しさを埋めるだけの相手だなんて。
「言えないような関係の男なのか?」
黙ってワインを飲む私に黒須が視線を向けた。
「どういう知り合いだっていいじゃない」
「よくない。そんな恰好であの男に会うつもりだったんだろう?」
黒須がまじまじと私の服装に目をやる。黒須の上着を着たままだったけど、胸と太腿の辺りが熱くなる。他の男性には見られても平気だったのに、黒須の視線は妙に恥ずかしくなってくる。
「そんな恰好で中年男に会うなんて、どれだけ危険な事かわかってるのか?部屋に連れ込まれるぞ」
「連れ込んだ黒須が言う?」
「確かにそうだな」
クスクスと陽気な声をあげて黒須が笑った。アルコールが回っているせいか、いつもより親しげだ。
「上着脱げば」
黒須の言葉にびっくりした。
「暑いだろ。春音の頬、真っ赤だぞ」
大きな手が私の頬に触れた。
ドキッとして息が止まりそうになる。
「勝手に触らないで」
手を振り払うとさらに可笑しそうに黒須が笑う。
「そんなに僕が嫌いか」
「嫌い」
「傷つくな」
言葉とは裏腹に黒須が余裕のある笑みを浮かべた。
全然私の言葉に傷ついていなそう。それが何だか悔しい。いつも黒須に振り回されるのは私ばっかり。黒須も少しは振り回されればいいのに。
「それであの男は誰なんだ?」
「よく知らない人」
「よく知らない相手とそんな恰好で会うのか?」
「お説教するの?聞きたくないんだけど」
「美香が聞いたら心配するぞ」
イラッとする。今は美香ちゃんの名前を聞きたくない。
「言いたければ言えば。別にどうでもいいから」
急に黒須が笑い出した。
「ホテルのバーでカウンター席の一番右側に座っていた男だよ。春音を待っているように見えた」
そんな所まで見られていたなんて恥ずかしい。
黒須にだけはどんな男性と会っているか知られたくなかったのに。
「確かチャコールグレーのわりと上等なスーツを着てたな。学生には見えなかったが。どういう知り合いなんだ?」
答えられる訳ない。寂しさを埋めるだけの相手だなんて。
「言えないような関係の男なのか?」
黙ってワインを飲む私に黒須が視線を向けた。
「どういう知り合いだっていいじゃない」
「よくない。そんな恰好であの男に会うつもりだったんだろう?」
黒須がまじまじと私の服装に目をやる。黒須の上着を着たままだったけど、胸と太腿の辺りが熱くなる。他の男性には見られても平気だったのに、黒須の視線は妙に恥ずかしくなってくる。
「そんな恰好で中年男に会うなんて、どれだけ危険な事かわかってるのか?部屋に連れ込まれるぞ」
「連れ込んだ黒須が言う?」
「確かにそうだな」
クスクスと陽気な声をあげて黒須が笑った。アルコールが回っているせいか、いつもより親しげだ。
「上着脱げば」
黒須の言葉にびっくりした。
「暑いだろ。春音の頬、真っ赤だぞ」
大きな手が私の頬に触れた。
ドキッとして息が止まりそうになる。
「勝手に触らないで」
手を振り払うとさらに可笑しそうに黒須が笑う。
「そんなに僕が嫌いか」
「嫌い」
「傷つくな」
言葉とは裏腹に黒須が余裕のある笑みを浮かべた。
全然私の言葉に傷ついていなそう。それが何だか悔しい。いつも黒須に振り回されるのは私ばっかり。黒須も少しは振り回されればいいのに。
「それであの男は誰なんだ?」
「よく知らない人」
「よく知らない相手とそんな恰好で会うのか?」
「お説教するの?聞きたくないんだけど」
「美香が聞いたら心配するぞ」
イラッとする。今は美香ちゃんの名前を聞きたくない。
「言いたければ言えば。別にどうでもいいから」
急に黒須が笑い出した。