本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
処置室を抜けると救急救命センターの広いナースステーションがあり、何台もの心電図モニターの電子音が響いている。

耳慣れた音なので異常を知らせるアラームが鳴らない限り気にならず、忙しそうに立ち動いている看護師のひとりを呼び止めて薬剤投与の指示を出した。

二十代後半の女性看護師は資格を取って六、七年目になる中堅だ。

心に余裕を持って仕事をこなせるようになれば、浮ついた思いも出てきてしまうらしい。

「先ほどの手術、お疲れさまでした。大動脈剥離の患者さんは生嶋先生に執刀してもらえて幸せですね。私もあの患者さんの担当になれて嬉しいです。先生からこうして指示をもらえるので」

媚びるような口調に、自分を可愛く見せたいと目論む上目遣い。

彼女からの好意が嫌でも伝わってきた。

修平は軽蔑の視線を向けたつもりだったが、いつもの冷めた表情とさほど変わらず、彼女には伝わらなかったようだ。

頬を染めてはにかむような笑みを返され、うんざりした。

真琴との結婚は望んでしたことだが、その副作用として恋愛面でのアプローチをしてくる女性が減るだろうと期待もしていた。
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