本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
『取引先の重役の娘さんなんだよ。甥が外科医だと話したらぜひにと言われてな。小さい頃、散々世話してやったろ。恩返しと思って会ってくれ』

小学生の頃の四年間を伯父宅で過ごしたけれど、修平の生活費や学費以上の金額を亡き両親の生命保険金から搾取され、一家の洗濯や掃除、食器洗いなどの家事もさせられた。

食事は伯母が作ってくれたが、修平の分のおかずはいつも切れ端や残り物で、なにもなかった時もあり、日常的に空腹を感じていた。

どこに恩を感じればいいというのだろう。

それで見合いの話は電話口できっぱりと断っていたため、真琴に求婚した理由にはあたらない。

(興味があるのは嘘ではない。真琴は俺に欠けているものを持っているからだ。恋愛感情というのは主観的なもので定義はあいまいだ。真琴をもっと知りたいというこの気持ちが愛情なのかはわからない)

しかし今は内省に浸る暇はなく、目の前で熱い視線を向けてくる看護師も無視して医師用パソコンの前に移動した。

別のICU患者の血液データを確認していたら、諦めずについてきた彼女に後ろからひそひそ声で呼びかけられた。

「なに?」
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