本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
すりガラスの窓やガラスシェードの吊り下がり照明、年季の入ったこたつテーブルと昭和の趣をひしひしと感じるお洒落感ゼロのしつらえだが、母と真琴が協力して掃除をし、いつも清潔で居心地のいい空間を保っていた。

「お兄ちゃん、仕込みはどうしたの?」

「面倒くさそうにやるなら帰れって、親父に言われた」

「一生懸命に働いてよ......」

注意されて心を入れ替えるのではなく、これ幸いと帰ってきた兄に真琴はため息をついた。

「もうご飯できるって。テーブルにカセットコンロ出して」

「俺は忙しい。マコがやって」

「どこが忙しいのよ。テレビ見てるだけじゃない」

「テレビ見るのに忙しい」

「もうっ!」

結局真琴がすべて夕食のセッティングをし、湯気立つ鴨鍋を見て「うまそう」と一番乗りでこたつテーブルについた兄を睨んでしまう。

「文句があるなら言えば?」

父を待たずに土鍋に箸を伸ばす兄はどこか楽しそうで、挑発に乗るまいと真琴は無言でそっぽを向いた。

すると遅れてテーブルに着いた母が笑う。

「泉はね、マコがもうすぐ嫁いでこの家を出るから寂しいんだよ」
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